(C)TWO-WAY/小学校/国語/２学年/スイミー
近藤 光弘 （奈良県・TOSS大和）
『スイミー』の全発問全指示を掲載しています。
原典は、千種彰典氏論文
【１】第１次第１時
教科書はまだ開いていない。
「スイミー レオ＝レオニ」と板書する。
題名と作者をみんなで読む。
絵本を取り出す。
レオ＝レオニ作 谷川俊太郎訳
『スイミー』（好学社）
『今日から「スイミー」の勉強をします。今から絵本を読みますが、どんな話だと思いますか』
「魚の話」
「小さな魚の話」
「スイミーは魚の名前」
思い思いに話す。
絵本の読み聞かせをする。
次は、感想を書かせる。
『スイミー』の話で、おもしろいなあということやへんだなと思うことを書いていきましょう。１・・・２・・・・というように、たくさん書いていきましょう。
教科書を開かせる。
机間巡視をしながら、次のように話した。
『おもしろいところを書き写して書いていくといいよ。理由も書けるといいね。』
『はてなと思うことでもいいよ』
約15分時間をとり、早くかけた子には教科書を読ませた。
時間がないのでいくつかを紹介して授業を終えた。
感想は次の通り。
【スイミー】
なんで同じ魚なのにスイミーは黒くて泳ぐのがはやいの。f
スイミーはなんでまぐろにおいかけられなかったのだろう。hy
どうして同じ魚なのにスイミーはからすがいより黒いのかな。n
スイミーはおもしろい。n
スイミーって頭がいいんだな。f.n
スイミーはまぐろにくらべるとたんてちっちゃいんだろう。hy
いっぴきだけでおよいでいくなんて、かわいそうなスイミー。ｆ、ん、ｂ、ｓ
まぐろにたべられそうになるなんてかわいそう。f
楽しくくらすってなにをしてたのしくくらすの。ｎ
【大きな魚になるところ】
大きな魚になるなんて『すごおい』ｆ、ｎa、ｓ
スイミーたちが大きな魚になったのが面白かった。ｂ、ｔ
【たとえのおもしろさ】
「ミサイルにたいにつっこんだ」がへんだと思った。ｔ
「見えない糸で引っぱられている」が何かへんだと思った。ｔ
「かおを見るころにはしっぽをわすれているほどながい」がすごいと思った。ｔ
くらげがにじいろみたいだからすごいなとおもった。ｓ
【２】第2次第1時
教材文は黒板に貼る。（模造紙に書いたもの）
①読む
『今日は、一の場面を勉強します。一の場面を読みましょう。』
3人に読ませる。
『小さな魚のきょうだいたちが、楽しくくらしていた。＞とありますね。どんなことをしていたのでしょう』
「おにごっこ」
「かくれんぼ」
「おいかけごっこ」 と次々に言う。
そこで、用意していた魚をだす。
図工の時間に小さい魚を作っている。
各自に小さい画用紙を渡して、小さい赤い魚を作っている。
３～５センチの小さな魚を一人一人作っている。色つけもした。大きさや色は絵本を見ているので、わかっている。５センチ以上の魚を作る子はいなかった（裏にマグネットをつけた）。
『自分の作った魚を動かして、楽しく遊んでみましょう』
それぞれに、楽しそうに遊んでいる。
「競争しよう」
「すもうしよう」
「先生を食べよう」
などと楽しそうにしていた。
『遊びの時間は終わりました。魚達は家に帰りましょう』
と言い、小黒板に貼らせた。
②書く
『次の文章を書き写しましょう』
（『 』は教師の言葉、「 」は児童の言葉）
ていねいに、黒板に字を刻み込むように書いていった。
＜黒板＞ア みんな赤いのに，一匹だけは黒かった。
イ みんなは赤いのに、一匹だけはからすがいよりもまっ黒。
ていねいに書かせる。
＜ア みんな赤いのに＞＜一匹だけは＞というように、少しずつ児童の書く速さで黒板に書いていった。
③読む
（指黙読、指斉読）・・・・・・・・前掲論文を参照。
『アとイの文の違いがわかるように読んでみましょう』
と言って、アの文を指さす（板書１）
教師は、板書しているアの文を指でなぞる。
（○は指を強く黒板にたたくところ）
図
児童は、教師が指さしたところを黙読する（指黙読）。
『はい、読んでみましょう』と言って先ほどと同じように指でなぞる。
児童は、指の速さに合わせて、一斉に音読する。
「みんな赤いのに、１ぴきだけは黒かった」
指黙読、指斉読は大事なところは注目させたり、 読み方に変化をつけることを教えたりするときに行う。この単元ではこれを継続して教える。
次はイの文（板書２）。
○ ・ ・ ・の変化がわかるようになぞる。
児童は黙読する（指黙読）
さらに続ける。
『はい、先生の指に合わせて読んでみましょう』と言って、指でなぞる。児童は、指の動きに合わせて、一斉に音読する（指斉読）。
「みんな赤いのに、一ぴきだけは、からすがいよりもまっ黒。」
④考える
アとイの文を比べて、考えてみましょう。
ノートに考えたことを書いてみましょう。
比べるについては、説明した。
比べると言うのは、例えば
『アがわかりやすいです。その理由は・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
というように、どっちがいい文かを考えたり
『絵にかいたら、アは・・・・・・・です。イは・・・・・・・・・・・です。』
というように、ちがいを考えたりすることです。
わからない子には個別指導をしていく。
『アだけを読んで、思ったことを書いてもいいよ。』
「比べる」については、次時以降少しずつ教えていく。
「イがいい。＜からすがいおりも＞と書いていてわかりやすいから」
＜わかりやすい＞のはなぜかを、さらに考えさせたいと思った。
「いの方が、黒いというのが強い感じがする」
「アは普通に黒いで、イの方はもっとアより黒い」
＜からすがいより黒い＞とうのはどうなのかなという問題が残った。
後日、図鑑で調べてくる子がいた。
みんなが言ったように、「からすがいよりも」というのがあるのでどんな黒なのかわかりやすいですね。
普通なら「真っ黒だった」となるけれど、「真っ黒」にしているのもいいね。強めて言っているようですね。
最後は暗唱させる。
今日読んだところを、もう一度読みましょう。
何回も読んで、覚えましょう。
一文を覚えたら、教師の所に来て言わせるようにした。
【３】第２次第２時
準備物
・教材文（模造紙に書いたもの）
・まぐろ（等身大ぐらいの大きなもの）
・小さな魚たち１００ぴきぐらい（ダンボール・画用紙）
・スイミー
＊マグロなどは、図工などの時間で作った。
教材文は黒板に貼る
まぐろや小さな魚たちは、下図のように教室横の掲示板にはっている。
図
学習の目当てを知らせる。
『今日はニの場面を読んでまぐろのようすとスイミーの気持ちを考えていきましょう』
と言い、目当てを書いた紙を黒板に貼る。
（『 』は教師の言葉、「 」は児童の言葉）
板書 まぐろのようすとスイミーのきもちを考えよう。
①読む
3人の人に読んでもらいます。まぐろの様子を思いうかべながら聞きましょう。
3人読む。
元気よく、はっきりとした声で読む子、少したどたどしく読む子、気持ちを込めて読む子といろいろだった。
場面の様子を動作化する。
今読んだところを劇にしてみよう。大きなまぐろやスイミーを使ってやってみましょう。
国語以外の時間で、やっているのでやり方はわかっている。
役割分担などを決める。
◆大きなまぐろを動かす人 3人
◆スイミー 1人
◆本読み 1人
ひと口で小さな魚の兄弟たちをのみこんだところを演じさせる。その後1人スイミーが泳ぐところも演じさせる。スイミーが思っていることを言わせながら演じさせる。時間の関係で1回だけしかできなかった。
②書く
『次の文を書き写しましょう』
ていねいに、黒板に字を刻み込むようにかいていく。
＜板書＞
ア すごいはやさで、およいできた。
イ すごいはやさで、ミサイルみたいにつっこんできた。
③読む
（指黙読、指斉読）・・・前掲論文を参照。
『アとイの文の違いがわかるように読んでみましょう。』
まず、アの文から。
板書しているアの文を指でなぞり、教師が指したところを黙読させる（指黙読）
黒板１
＊＊＊＊＊＊＊
ア すごいはやさでおよいできた。
（＊＊ははやくなぞる所）
『はい、読んでみましょう』と言って、先ほどと同じ様に指でなぞる。
児童は、指の速さに合わせて、一斉に音読する。（指斉読）
「すごいはやさでおよいできた」
次は、イの文（次頁黒板２）。
イの文は変化をつけて、なぞる。
＊＊＊や○・・・・・の変化がわかるように指でなぞる。
児童は、黙読する（指黙読）。
『はい、先生の指に合わせて読んでみましょう』といって、指でなぞる。
児童は、指の動きに合わせて、一斉に音読する（指斉読）
＊＊＊＊＊＊＊＊ ○・○・・○・
「イ すごいはやさで、ミサイルみたいに つっこんできた。」
図
（＊＊＊は速く読むところ、・・・は強調して読むところ）
このようにして指黙読と指斉読ヲさせる。
ここでは教師の読みを教えることになる。多様な読みをさせることも、この後必要である。
④考える
「すごいはやさでおよいできた」「すごいはやさでミサイルみたいにつっこんできた」を比べて、考えてみましょう。ノートに考えたことを書いてみましょう。
「比べる」については、繰り返し学習している。児童は、どのように発表するかはわかっている。
分からない場合は次のようなことを助言する。
助言１ どちらがよくわかるかを言いましょう。理由も考えましょう。
助言２ テレビなどで見たこと等、この文に関係あることを言いましょう。
助言３ 他のもので例えて、ようすを話しましょう。
（例）「ランナーがつっこんできた」
のようにつっこんできた。
助言４ 動作（動き）をつけてようすを（違いを）話しましょう。
助言５ 「 スーッ」など（擬態語、擬音語）の言葉を使って、（違いを）話しましょう。
助言６ なるほどと思った考えにつけたして、言いましょう。
助言７ どちらかの文を読んで感じたことを言いましょう。
助言６・７は発言ができにくい児童に対して言う。
＜アとイを比べて＞
（強弱）（感じ）
「まぐろはスイミーより速いのかな」
（坂東）◎
「アはただ速いで、イはすごく速い。世界一速い」（山本）○
「アの方は、ゆっくり泳いだようすです」◎
「山本さんと同じで、「ミサイルみたいに」というのと「つっこんできた」というのがあるから、すごく速いとおもいます」（西村）○
「アは『すごいはやさで』って書いてて、スイミーはよりおそいけど、イの方はスイミーよりはやいと思います」（下橋）◎
「スイミーは新幹線より速いと思った」（富谷）◎
「教科書の初めの方にかいてあったけれど『スイミーはだれよりもはやかった。』と書いてあったので世界一はやいと思います」（坂東）◎
「アは普通で、イは『つっこんできた』だから、すごくはやく泳いできたようだ」○＜注１＞
（○は教師が予想していた反応、◎は教師が予想していなかった反応）
「ミサイルみたいに」だからほんとにすごい速さです。あっという間のできごとです。「つっこんできた」というから、まぐろがむかってきたのです。
⑤考える
次は、スイミーの気持ちを考えさせる。『まぐろにおそわれたスイミーはひとりでにげました。
次は、ひとりぼっちになったスイミーの気持ちを考えていきましょう。』
「こわかった」「さびしかった」「とてもかなしかった」のうち、どれを強く読めばよいでしょうか。
スイミーの気持ちがよくわかるように読んでいきましょう。
次のように模造紙に書いたものを黒板に貼る。
＜板書＞
ア こわかった。
さびしかった。
とてもかなしかった。
イ こわかった。
さびしかった。
とてもかなしかった。
ウ こわかった。
さびしかった。
とてもかなしかった。
ア・イ・ウの読み方の違いがはっきり分かるように、範読する。
強く読むところは、大きな字で書いている。
どの読み方がいいでしょうか。ノートにアイウから選んで書きましょう。
その理由も書きましょう。
3分後、発表させる。
まず、アイウの人数を確認する（アが4人、ウが5人）。
発表させる。
「私はアがいいです。『こわかった』を強く読む）理由は、まぐろが怖かったのかと思って、私はアにしました」
『こわいと言う気持ちが一番だから、ここを強く読むといいんだね』
★話し合いを方向付けるためにこのように言った。
「ぼくはウがいいです（『と手のかなしかった』と強く読む）
とてもかなしかったと言うところを元気いっぱいに読んだら、元気いっぱいになる」（平川）
★とらえ方が少しずれているが、子どもらしい考えである。スイミーを元気付けてやりたいと考えている。
「（ウ）「とても」という字がついているから」（富谷）
『なんで、とてもをつけたんだろうね』
★すぐにこたえられなかった。文を慎重に読む子どもである。
「（ア）まぐろが追いかけてきたとき、仲間が食べられてそのことがこわかったと思ったから」（坂東）
「坂東君に質問だけれど、まぐろにおそわれたんなら、こわかったじゃなくて、さびしかったんじゃないかなと思います。」
★＜食べられた後だから、さびしかったんじゃないか＞と言っている。細かいところまでよく聞いている。この後坂東君は理由の言い方を変える。（以下中略）
「（ウ）こわかったもさびしかったも一緒になって読むような感じだからです」（山本）
『いっしょになって読むような感じと言うのはどういうこと？』
「こわかったもさみしかったもまとまって読むような感じです」
「（ウ）自分が恐かったとき、一番よく「覚えているので、スイミーもそうじゃないかと思う」（藤沢）
★山本さんがたいへんするどいことを言っている。
ここをあとで補足説明することにした。
★追加発問を考えていいたが必要なかった。
＊「こわかった」「さびしかった」「とてもかなしかった」は一度にかんじたのでしょうか（追加発問）。
『山本さんがまとめて読めばいいの言ったけど、意味がわかるかな』
「わかりません」（数人）
『先生が感じたことを言いますね』
まず、はじめにまぐろにおそわれたから「恐い」と感じた。少し泳いで行くと（スイミーを動かしながら）「ひとりで寂しいかな」と感じている。まだまだ泳いでいくと、「こわい」と「さびしい」のふたつのことがあるから、「とても かなしい」になった。だから、「とても」がついているのかもしれないね。
この３つのことをスイミーはいっぺんに感じているのですね。１つのことでも大変なのに３つもいっぺんに感じて、スイミーの心の中はどうなっているのでしょうね＜註２＞
どれが正解かは言わなかった。ウを助ける立場で意見を言った（私もウに賛成）。
⑥読む
『暗い海の底を泳ぐスイミーの心がよくわかるように読んでいきましょう』
３人の児童に読ませる。
＜注１＞
次のような反応を予想していたが、児童からは出なかったものである。
多くの反応を引き出すようにしたい。反省の材料として挙げておく。
＜ミサイルみたいに＞
「『ミサイルみたいに』とあるから、おそろしい感じがよくわかる」
「アは普通だけど、イは『ミサイルみたいに』とあるから、おそろしい感じがする」
＜つっこんできた＞
「イはバキューンというように突っ込んできたと思います」
「『つっこんできた』だから、すごくはやく泳いできたようだ」
（何かに例えて）
「アは歩くような感じで泳いで、イは走るような幹事で泳いでいる」
「アはスーッと泳いでいて、イはバキューンというように突っ込んできたと思います」
（泳ぎから）
「アは曲がったりして泳ぐみたいだけど、イはまっすぐ泳ぐようだ」
＜注２＞
まとめについては、次のようなことを言う予定にしていた。
みんなの発表を聞いていて思ったことを言います。
① こわい、さびしい、かなしいという３つのことをスイミーはいっぺんに感じている。
② こわいさびしいという気持ちがあったから、とてもかなしくなったのかもしれない。
③ ひとりで泳いでいるとき、
初めは「こわい」を強く感じて
次に「さびしい」を強く感じて、
最後に「とてもかなしく」なったのかもしれない。
時間があれば次のように問うつもりだった。
『みんながこわかったと感じたことはありますか』
『さびしかったことはありませんか』
『かなしかったことはありますか』
自分達の生活のことと比べて話す子がいると、横道にそれやすい。
話が横道にそれたら、本文に戻って考えさせるように助言する。
『友達が死んでも強い人もいるというけれど、スイミーの場合はどうでしょう。友達のことをどう思っていたのでしょうか。』
このように，常に登場人物のようすを考えさせるようにする予定だった。
図
【４】第2次第3時
①読む
教材文は教室横の掲示板に貼ってある。
『３の場面を読みましょう。スイミーはどんなものを見ているかな』
3人に音読させる。
②考える
スイミーが見ているものは何ですか。
見えていると思うものをどんどん発表させる。テンポよく進める。
出てきたものは次の通り。
＜板書＞
１ くらげ ２ にじ色 ３ ゼリー ４ いせえび ５ 水中ブドーザー ６ 魚 ７ 見えない糸 ８ こんぶやわかめの林 ９ ドロップ 10 岩 11 うなぎ（顔・しっぽ） 12 いそぎんちゃく 13 もも色
「・・・・・みたいな」は、以前学習している。しかし、ゼリーなども見えているものとかんがえている。そこで、おかしいものをあげさせた（この発問はよくなかった）。
『この中で、スイミーは見ていないというものはどれですか』
「風がおかしい。風が海にあるわけはない」
これで納得すると思った。しかし、違った。
「風だって海が浅いと入ってくることがある」
「波が立つと風のように見える」
「波は海の中では、おきない。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
このような話合いでは、何時間でもかかる。
途中でストップさせ、次のことを聞いた。
『海の中と書いているけれど、どれくらいの深さの海ですか』
「暗い海の底だから、深いです」
『深い海だとしたら、もし、山の高さぐらいあるとしたら、風は入ってこないでしょう』
これ以上は難しいと考え、話合いの視点を変える。
最初から次のように発問すればよかった。
（黒板を指し示し）この中で、これはあっているというものはどれですか。
「見えるもの」を聞いた方がわかりやすい。
簡単に確認していった。
「くらげはいい」
『くらげは見えていますね。いいですか』
「はい」
こうして残ったのは6つ（全員が納得しなかったもの）
１ にじ色 ２ ゼリー ３ 水中ブドーザー ４ 見えない糸 ５ ドロップ ６ 風
今度は「おかしいもの」をきいてもよいと考えた。
この中で、おかしいものはどれですか。
「ゼリーはおかしい。海に中にせりーはない」
「水中ブルドーザーもおかしい」
「ドロップもおかしい」
＜ゼリーみたいに見えたのであって、実際にはみえていないんだね＞とまとめればよかった。
残されたものは「にじ色」「見えない糸」「風」となる。
【「にじ色」の検討】
『＜にじ色＞についてはどうですか』
＜見えない派＞（7人）
「にじ色はおかしいと思います。にじ色にはくらげは見えない。くらげは白か透明だと思います。」
＜見える派＞（3人）
「にじ色は見えたと思います。光が当たってそういうように見えたと思います」
「にじ色はかいた人がそういう色みたいと思って書いたのだと思います。」
「『たんぽぽのちえ』野勉強のとき、らっかさんを見ていなくても、（作者は）書いていたんだから、そう見えたから書いたと思う」
『見えない派の人に言うよ。シャボン玉だって光が当たるとき、きらきら光ってにじ色に見えるでしょう。だから、にじ色は見えるかもしれないよ』
それでも納得しない子がいた。
「わたしはくらげを見たよ。その時は白か透明みたいな色だったよ」
ここでは、視点の違いを説明する。
『藤沢宣はどこからくらげをみたのかな』
「私は上から（くらげを）見ました。」
『藤沢せんはくらげを上から見ました。スイミーはどこから見たのでしょう。
ここは、もう少していねいに扱えばよかった。
みんなに考えさせるべきだった。
『スイミーは海の中から、くらげを見上げるようにしていたでしょう。そして、光が当たってくらげがにじ色に見えたのです。』
こう説明すると、「絵本を見たい」という子がいた。
絵本では、くらげは横から見たように書かれている。ただし、スイミーの位置は書かれていない。
「こんどくらげの本を持ってくるよ」ということで落ち着いた。
（後日、くらげの本を持ってきた子がいた。）
＜追記＞
ここでは、説明だけではわかりにくいようだった。
次のように、問えばよかった。
追加 次のアとイはどのように違うでしょう。
ア にじ色のゼリーのくらげ
イ にじ色のゼリーのようなくらげ
このように問い、「みたいな」にういて、もう少し考えさせた方がよかった。
（アだと、にじ色のゼリーでできたくらげとなる）。
その後で、つぎのようにまとめるとよい。
『アだと＜虹色のゼリーでできたくらげ＞になります。虹色のゼリーでできたくらげと言う意味です。
イは、ゼリーのように見えるくらげです。＜ゼリー＞見たいに見えただけなんですね。』
一度でとらえさせるのは難しい。
後は、「・・・・・みたいな」を使った短文作りをさせるとよいだろう。
【「見えない糸」の検討】
『「糸」ヲスイミーは見ていますか。』
「見えない糸」を見ているかどうか、と聞くとややこしくなる。そこで、「糸」を見ているかと聞く。
＜糸は見える派＞
「見えない糸っていうのはつり糸のようなものだから、本当は糸がある。だから見える」
＜糸は見えない派＞
「糸は見えない、見えないと書いているから見えない」
体験重視派は、釣り糸にこだわる。
普段あまり発言をしない子なので、否定しなかった。
「つりいとがある」「誰かが糸を引っ張っている」という話が続く。
単純な話合いになる。
揺さぶりが必要と考えた。「つりいと」の考えをつぶそうとした。
『この場所はどういうところですか』
「海の中」
「海の底」
絵本を見せながらゆさぶる。
『本当に糸で引っ張られているというけれど、それなら魚はついてくるはず。楽しそうに泳いでいるからつられているのはおかしいよ』
『でも、「糸で引っ張られている」と書いてある。おかしいな』
・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくして、＜見えない派＞の坂東訓が次のようなことを言った。
「魚達は釣り糸じゃなくて、気持ちの糸で引っ張られているんだと思います。きれいな糸で引っ張られていると思います」
「気持ちの糸」とはすごいことを言うと思った。
『おお、すごいことを言うね。・・・と言ったみんなよく聞いて。＜気持ちの糸＞・・・と言ったよ』
「ええっ」という反応。
「そんなのもないよ」と言う子もいる。
おかしなことを言うなあという表情の子もいる。
『坂東君の考えを聞いて、先生は思ったよ。例えば、それにあがるたこがあるでしょう』
そう言って、坂東君と私で「たことたこをあげる人」の動作をする。たこと人の動きが上手く合うようにする。
＜補足説明＞
いま糸はないね。でも、先生の気持ちが坂東君に伝わったので動きが合いましたね。これが「見えない糸」。これが坂東君の言う、「気持ちの糸」というのじゃないの。
だから、坂東君の言ったのは、「魚も、一番前にあわせるようにしている。気持ちの糸で引っ張られている」ということではないかな。
『こういう様子を見たことがありませんか。水族館などで』
「見たことある。みんな揃って泳いでいたよ」
「かわに魚を取りに言った時、みんな一緒に泳いでいたよ」
「もしその魚たちが見えない糸で引っ張られているように見えたら、坂東くんの言ったのは当たっていることになるよね。今度行くことがあったらよく見ておこう』
「水族館に行ったけど、そういうふうに見ていなかったよ。よく覚えていない。今度はよく見てみるよ」
こうして、問題意識を持たせるようにして、授業を終わった。
【５】第２次第３時（追加）
第３時の後、別の時間で短文作りを行った（20分ぐらい）。
『「スイミー」野文でおもしろいところがありあす』
といって、黒板に文を書く。
板書 うなぎ。顔を見るころには、しっぽをわすれるほど長い。
この文と同じような文を作る。
すぐに、作るのは難しい。
そこで次のように「虫食い」にした。
＜板書＞
〔 〕。〔 〕を見るころには〔 〕をわすれているほど長い。
これをもとに作らせた。
『〔 〕の中に言葉を入れて、文を作りましょう。』
みんな楽しそうに文を作っていった。
「うさぎ。しっぽを見るころには、耳を忘れるほど長い」
『すごく、どうの長いうさぎということだね』
「うさぎ、顔を見るころには、耳を忘れているほど長い」
『なるほど。すごく、耳が長いウサギということだね』
上のふたつの違いを絵にかいてみせた。
図
「へび。頭を見るころにはしっぽを忘れるほど長い」
「しんかんせん。一番前を見るころには後ろを忘れるほど長い」
『あー。あんなに速く走っていてもわすれるくらい長いんだね。すごい』
これを聞いてすごく喜ぶ子がいた。
子どものおもしろがるところが少し違うと感じた。
「タワー。てっぺんを見るころには、一番下を忘れるほど長い」
「山。地面を見るころには、てっぺんを忘れるほど長い」
「高いではなく長いだから、おもしろいかもしれないね」
「長い」と「高い」の違いが分かるように、絵にかいてみせた。
図
「木。枝の先を見る頃には、木のもとを忘れるほど長い」
「木。枝を見る頃には、根っこを忘れるほど長い」
まだまだ、発表したいようだった。時間がなく、ここまでになった。
絵にかいてみせたり、かかせたりするとおもしろいと考えた。
【６】第2次第4時
教材文は黒板に貼る（模造紙にかいたもの）。
① 読 む
『今日は、5の場面を勉強します。５の場面を読みましょう』
3人に読ませる。
② 書 く
『つぎの文を書き写しましょう』
（『 』派教師の言葉。「 」は 児童の言葉）
ていねいに、黒板に字を刻むように書いていった。
＜板書＞
ア みんなが一匹の大きな魚みたいにおよいだとき
イ みんなが一匹の大きな魚みたいにおよげるようになったとき
③ 読 む
（指黙読、指斉読）・・・・・・・前掲論文を参照。
『アとイの分の違いが分かるように読んでみましょう』
と言って、アの文を指さす。
板書
ア みんなが 一匹の大きな魚みたいにおよいだとき
教師は板書しているアの文を指でなぞる。
児童は、教師がゆびさしたところを黙読する（指黙読）。
『はい、読んでみましょう』と言って、先ほどと同じように指でなぞる。
児童は、指の速さに合わせて、一斉に音読する。
「みんなが一匹の大きな魚みたいにおよいだとき」
指黙読、指斉読派大事なところに注目させたり、読み方に変化をつけさせることを教えたりする時に使う。
次はイの文。
板書
イ みんなが 一匹の大きな魚みたいに およげるようになったとき
大きな字・・・・・・変化がわかるようになぞる。
児童は黙読する（指黙読）
さらに続ける。
『はい、先生の指に合わせて読んでみましょう』と言って、指でなぞる。
児童は、指の動きに合わせて、一斉に音読する（指斉読）。
「みんなが一匹の大きな魚みたいにおよげるようになったとき」
このようにして指黙読と指斉読をさせる。
④ 考える
アとイの文を比べて考えてみましょう。
ノートに考えたことを書いてみましょう。
比べるについては、前に学習している。
しばらく『スイミー』の学習ができなかったので。どう書けばいいか分からない子もいた。
分からない子には次のように言った。
『アとイでは、どちらがいいですか』
『どうしてイがいいのですか』
「教科書に書いているから」と書いている子もいた・
イがいいと言う意見が全員。
その理由を発表させる。
「イがいい。＜およげるようになったとき＞と書いていてわかりやすいから」
このように書いている子が10人中3にん。
＜わかりやすい＞のはなぜかを、更に考えさせたいと思った。
はじめは表面的なことの発表が続いた。
書いてはいなかったが、次のような発表があった。
「イの方が、一匹の大きな魚みたいに泳いでいる感じがする」（西村）
「イの方は、魚が上手に泳いでいるみたい」（藤沢）
「アは最初から練習しないで泳げるようになったようです」（山本）
「私も山本さんに付け足して、イは魚たちが何回も練習しているみたいです」（西村）
「イがいい。イは、魚たちが何回も練習を続けているみたいです」（富谷）
みんなが言ったように、「泳げるようになった」というのは「泳いだ」とは全然違うね。魚たちははじめは一匹の大きな魚にはなかなかなれなかったでしょう。練習をして、やっと「およげるようになった」のですね。
何回も練習したことを児童はとらえた。練習の期間を考えさせる。
スイミーたちはどれくらい練習したのでしょうか。
ア 1時間
イ 1日
ウ 1週間
いっぴきの大きな魚みたいに泳げた魚たちのようすがわかるように読んでいきましょう。
3人の児童に読ませる。
アンケート（参考資料）
「こわかったこと さびしかったこと かなしかったこと」
＜アンケート＞（学活）
第2次第２時の学習の前に、アンケートをとった。
「こわかった。さびしかった。とてもかなしかった」という表現を読み取るために必要と考えて，実施した。
こわかったこと、さびしかったこと、かなしかったことを書いてください。思い出すだけでいいです。
学校のことでも、家のことでもいいです。
主なものをいくつかあげる。
【こわかったこと】
「ふじさわさんちに行くとちゅう、へびがいたのがこわかった 」Y
「こわかったゆめを見たとき」F
【さびしかったこと】
「一人だけでおるすばんしてさびしかった」S,N
「学校からかえったらおばあちゃんがいなかったのがさびしかった」Y
【かなしかった】
「しんせきのあかちゃんがしんだから、かなしかった」H,N
「ちいさいころ、お店にいってまいごになったことがかなしかった」T
「おねえちゃんがしゅうがくりょこうに行ってしんぱいで、かなしかった」A
「うさぎが２回しんだこと」N
「ねこのパルがしんだこと」B
上にあげたものを発表させた。
機会があればと考えていたが、国語の時間で取り上げることはなかった。
発表の仕方について、次のような表を掲示している。
「くらべて考える」
１ どちらがよくわかるかを 言いましょう。りゆうも考えましょう。
（れい）「アの方がよくわかります。そのわけは、・・・・・・・」
２ テレビなどで見たことなど、この文にかんけいあることを言いましょう。
３ ほあのものに たとえて、ようすを話しましょう。
（れい）「まぐろは、しんかんせんみたいに速いと思います。」
４ どうさをつけて、ようす（ちがい）を話しましょう。
（れい）「すぼむ」と「しぼむ」野違いを手で表す。
５ 音やようすをあらわすことばをつかって、（ちがい）話しましょう。
（れい）「ドタドタと歩く。」と「タタタッと歩く。」
「ポトンというようにたんぽぽがたおれる。」
児童の発言の中から出てきたものを（れい）としてあげている。
これを見て、いろいろな話し方ができるようにさせる。
【７】 新出漢字の指導
新出漢字を約５文字（『あかねこ漢字スキル』光村図書１頁分）を３～４日のペースで覚えていく。
毎日、１時間目の１０分を漢字練習にあてた。
１日目 『あかねこ漢字スキル』で練習をする（約10分）。
「空書き」「なぞり書き」をした後、漢字スキルで練習をする。
早くできた子には、目を閉じて空書きをさせる。
（１）漢字の成り立ちを１日に１文字紹介する。
（２）覚え方（唱え方）１日に１文字紹介する。
（１）（２）については、以下の文献を使った。
下村昇『下村式 唱えて覚える漢字の本』偕成社
２日目 ノートに練習する（約１０分）。
テストに出る漢字（10問）をノートに練習する（1問を1行ずつ練習する）。
時間が限られているので、練習する字を選ばせる。
『難しい字から練習していきなさい』
『10問中5問以上練習できるようにしましょう』
＜帰りの会＞
漢字練習を宿題にする（1文字をノートに1行）。
練習する字を黒板に書き、連絡帳に書き写させる（間違いをチェックする）。
『この字は明日は間違えないようにがんばろうね』
3日目 小テストをする（約10分）。
（１） テストをする。
（２） できたら隣どうしで丸付けをする。点は書かせない。
（３） 教師が点検し、点数を書く（教務必携に記入）。
（４） 合ったところはシールを自分で貼る。漢字が苦手な子には特に注意し、前日に間違えた字が書けたかどうか確認する。
『昨日、間違っていた字はどうだったかな』
4日目 再テストをする（約10分）。
前日、間違ったところだけをテストする。
前日満点の子はテストはしない。
漢字のなりたちや覚え方を小黒板に書かせる。
前掲書『漢字の本』を見て写す。
＊はじめは、この再テストの時間をきちんととった。
1ヶ月ぐらいたつと、ほとんどの子が80点以上になった。
そこで、再テストは3日目に終わらせた（各自、帰るまでに行う）
単元の終わり 漢字遊びをする（約10分）
『漢字の本』の1単元文が終わると、漢字j遊びをする。
＜参考文献＞・馬場雄二『漢字ハンドブック』仮説社
・グループ「あ！」編『文字ひっかけ遊び、漢字・感字クイズ』二見書房