語り継ぐべき日
７月７日 盧溝橋事件
１ 日中戦争の発端となった慮溝橋事件
「昭和１２年（１９３７年）７月７日に響いた一発の銃声があの支那事変を引き起こした」
慮溝橋事件です。
多くの日本人は支那事変の発端を廬溝橋事件だと理解しています。
北京郊外の慮溝橋で夜間軍事演習中の日本軍が銃撃されました。蒋介石の国民党軍も銃撃され、お互いに相手が攻撃してきたと誤解し、日中双方が小競り合いになります。この事件以降の戦闘は「北支事変」と呼びました。
続いて上海事変という大戦闘がおき、９月２日「支那事変」と呼び方を変えました。
１２月には日本軍は首都の南京を経略しました。戦火は広がり続けます。
「日中戦争は、宣戦布告こそなかったが、事実上の全面戦争だった」
多くの日本人はこのように中国との戦争を理解しています。
２ 西安事件
日中戦争の発端とされる慮溝橋事件ですが、その前年に西安事件というのがありました。
昭和１１年（１９３６年）１２月１２日のことです。
そのころの大陸の情勢と言えば、三つの勢力が存在しました。
① 蒋介石の国民党「軍」、
② 日本「軍」、
③ ソ連をバックにした毛沢東の中国共産党
蒋介石は、あと一歩で中国共産党を壊滅させるところまで追いつめ、毛沢東はソ連に亡命する飛行機に乗り込もうとするときに、事件が起きました。
西安というところで、蒋介石が部下の張学良に監禁され、共産党に引き渡されたのです。
毛沢東はすぐに蒋介石を処刑しようとしました。
しかし、スターリンが許しません。蒋介石を対日戦争を行うために利用しました。
蒋介石は日本との即時全面戦争の約束をさせられました。そうして釈放されたのです。
３ 通州事件
まず慮溝橋事件がおきましたが、すぐに日中間で停戦協定が結ばれます。
停戦協定後も、共産党員は、さらに挑発行為を日本人に加え続けます。
北京周辺で日本軍への襲撃事件は続き、７月２９日には、２００人以上の日本人居留民が虐殺される「通州事件」が発生します。女性は輪姦された上、四肢を切断されるなど、常軌を逸した虐殺です。テロの続発は、蒋介石への約束履行の催促でもあります。
通州事件が日本に報道されるや、日本の内外には当然に怒りの声が溢れます。日本の強硬論はこの事件で止まらなくなります。
４ 上海事変
慮溝橋事件が起きたとき、日本軍部は、現地和平の方針でした。“すぐに消火せよ”です。
しかし、総理大臣近衛文麿が消火を否定しました。戦いをいやがる参謀本部に対して、「世論がこんなに怒っているのに参謀本部はなぜ戦おうとしないのだ」と圧力を掛けます。
蒋介石は、ドイツと秘密条約を結びドイツ軍人を多数雇いました。
８月１３日、蒋介石は、上海の日本居留民十余万人とそれを保護する海軍陸戦隊５千人に対して決戦に出ました。それに対し、日本は計９個師団の大軍を逐次送り込み応戦します。
西安事件の約束を蒋介石は実行したのです。
このとき、日本は閣議で、「北支事変」を「支那事変」と改めました。
５ 「事変」と「戦争」
近衛文麿は、「戦争」ではなく「事変」と呼ぶことに決めました。
宣戦布告があるのを「戦争」、ないのを「事変」といいます。
戦争ではないので、中立国の設定ができません。蒋介石は、米英ソ独といった国々から多額の援助を引き出して、徹底抗戦を図り、日本は苦しみます。日本と英米がもめるのがこの点です。
アメリカは完全な死の商人国家で、ルーズベルトは蒋介石に武器や傭兵など軍事的支援を含めあらゆる支援をしながら、日本にも石油を売りつけ、ぼろ儲けしました。例えば、フライングタイガーという名の航空隊を派遣しました。
宣戦布告をすれば、国際法で保証された交戦国としての権利を行使できます。
味方・敵・中立の区別ができます。
経済的支援を一方の国にしたら敵国認定されます。
海上封鎖、鉄道封鎖、国境封鎖ができます。
自国民居留民保護も軍隊が行ってかまいません。
中支那派遣軍司令官松井石根は、宣戦布告をしてくれと何度も要請していますが、近衛首相達の反応は「ノー」でした。
昭和１６年１２月に「支那事変を大東亜戦争に含む」と宣言してからは以上のことは問題なく行えました。内閣は東条英機です。
６ 事変の泥沼化
近衛の顧問は、尾崎秀実でした。ソ連のスパイだということが後ほどわかります。近衛達は、全く別の構想に夢中でした。それが「蒋介石を相手とせず」という声明となります。
交渉相手がなければ、講和はできません。和平の道を自ら閉ざしてしまいます。あとは事変の拡大と遂行しかありません。支那事変は果てしなく、負けるまで戦い続けるようにし向けられていたかのようです。
７ 中華人民共和国の成立
ここまでで、三つの勢力の一つが全く姿を見せません。中国共産党です。
日本の降伏が決まり、国民党「軍」が日本との戦争で疲れ果てたとき、中国共産党はソ連の援助をバックに背後から襲いかかり、内戦で政権を奪い取ります。こうしてできたのが中華人民共和国です。